だって、こんな日のために例のアレはあるんじゃない!
こんな日に食べなくてどうするのよ!!
私は、ぜーったいアレが食べたいの!!



−彼女の本性 〜前編〜−



寒い冬のある日。今日は朝から雪が降りしきっていた。お陰で交通機関は麻痺し、R.E.Dを訪れる患畜も少ない。この季節になると、大体の動物が動きが鈍くなるから、あまり急患が多い時期ではないのだ。
珍しく定時に終われそうなほど閑散とした、R.E.Dの中。二科医局では、獣医師のと、看護師の瀬能がカリカリと机に向かっていた。
ふと、瀬能が窓を見つめる。そこには、どんよりと曇った空と、やむ事を知らず降りしきる雪。少し不安そうに見上げる瀬能に、は声をかけた。

「どうしたの?瀬能さん」

「え、えぇっと・・・この雪、いつになったら止むのかなぁって・・・」

「そうねぇ・・・雪って、本当に憂鬱よね。」

「ですよねぇ・・・」

カチャリとドアの開く音がして、二人は視線を向ける。そこには、現在二科主任の美坂、そして鞍智が立っていた。美坂は白衣だったが、鞍智はパーカーを着ていた。そういえば今日は近くの動物園で飼育されているワニの健康診断だと朝に言っていたのを、は思い出した。

「鞍智、お疲れー。」

「疲れましたよ・・・本当に。寒いし、雪の所為で滑って転ぶし。」

「わぁ、散々だなぁ。大丈夫?」

「お陰さまで。」

主任の席に持っていた資料を置きながら、美坂はちらりと時計を見た。もう少しで出勤時間が終わる。もうR.E.Dの中には受診の患畜はほとんど残っていなかった。普段なら定時で上がろうにも上がれない状況下で、こんな日は本当に珍しい。こんな日は滅多にないのだから、看護師や獣医たちと一緒に飲みに行って、お互いの親睦を深めるのもいいかもしれないと、美坂は思った。

「皆さん、お疲れ様デス。」

次に入ってきたのは獣医兼樹木医の木々樹リン。
美坂がメンバーはこんなもんかと高をくくり、

「どうだ、皆で飲みにでも行かないか。」

と話を切り出した。その発言に、一喜一憂する面々。

「いいデスネ。こんな寒い日は熱燗をキューっと・・・」

「やだ、リン、おっさん臭い!美坂先生の奢りなら行ってもいいです!」

「おっさん・・・デスカ?」

「別に熱燗がおっさん臭いんじゃなくて、今の発言がおっさん臭かっただけ。」

「でも、はそのおっさんを愛してくれているんデショウ?」

「だまらっしゃい。」

その夫婦漫才さながらのやり取りを見ていると、皆自然と顔が綻ぶ。相思相愛とはこのことなのだろうと思う。木々樹とは、R.E.Dで知らぬ者はいないほどのラブラブぶりを毎回披露している。それがイヤミくさく見えないのは、きっと皆が木々樹との人となりを良く知っているからだろう。
二人の様子を見ているのは楽しいのだが、さっきが言った言葉を訂正しなければならないと美坂はその二人の会話に割って入った。

「おいおい、誰も奢るなんていってないぞ。」

「何を奢るんだ、美坂。」

そこに登場したのは、R.E.Dの院長、高宮。なにやら手に書類を持っていて、恐らくはそれを美坂に届けにきたのだろう。

「じゃぁ、院長先生の奢りということで!」

玩具を与えられた子供のように、の目が輝く。

「ちょ、ちょっと待て、何の話だ!」

当の高宮は慌てふためく。無理もない。何が何だか話の内容が読めていないのだ。美坂は仕方なく今までの経緯を話す。それを聞いていた高宮は、眉間に皺を寄せた。大の大人が6人で飲みに行って、一体いくら掛かるのか。すでに頭の中で計算をはじめてしまう。そんな計算を頭の中で行っているときに、鞍智が言ってはいけない言葉を口にした。

「こんな寒い日は、鍋とか食べたいですよねー。」

「ば、バカ・・・!」

「それは禁句デス・・・」

「・・・もう遅いみたいだな。」

「鍋がいい!!!!」

大声で叫んだのは他でもない、、その人である。そのあまりに大きな声に頭を抱える高宮、木々樹、美坂と、キョトーンとしてそれを見つめる瀬能と鞍智。

「ね、鍋にしましょうよ!!鍋に!!こんな雪の日に鍋食べなくてどうするんですか!鞍智、お前、いいこと言った!!岩城なんかより優秀ね!」

自然と高宮と美坂の視線が木々樹に移る。しかしながら、木々樹は苦笑いを浮かべて頭を横に振った。そう・・・もうこうなってしまえば、木々樹でも歯止めが利かないというサインだった・・・。

後編



ただ単に、寒いから鍋食べたいなー
とか思いながら書いてる次第です。
夕飯の前に後編書いてしまおう。
今日の夕飯はラーメンだってよ・・・
無類のご飯好きな私に
お昼うどんで夕飯ラーメン?!
もう、禁断症状出そう・・・。
勘弁して、お母様!
ご飯とチゲ鍋が食べたい・・・