妻のことは愛していた。
だが・・・彼女を愛したこともまた事実。
戦火よりも激しく燃え上がった想いを、留める術を私は知らなかった・・・
−forbidden lover 01−
その時、ガンマ団が交戦していた国は、海上戦を得意とする国だった。ガンマ団とて空中戦、地上戦のみに長けているわけではない。しっかりと海上艦隊を持ち合わせており、共に激しい海上戦を繰り広げていた。
なかなか決着がつかず、総帥であるマジック自ら戦場へと赴くこととなった。マジックの指揮の元、相手国の艦隊のうち1つの軍艦を破戒した。
打ち壊された軍艦から、多くの捕虜たちがガンマ団の軍艦へと移される。
それを眺めていたマジックの目に、あまりに美しい女性が目にはいった。相手国の軍服に身を包み、きつく結い上げた黒い髪は乱れ、顔は煤まみれだが、とにかく美しい女性。
マジックの視線に気がついた女性は、憎しみに満ちた目でマジックのことを睨みつけた。その美しくも強い光を放つ瞳に、思わずマジックも気圧されてしまう。
自室へ戻りしばらくすると、部下がある資料を持ってきた。捕虜として捕らえた者たちの名前や役職などが書かれた写真つきのその資料の中から、マジックはあの美しい女性の資料を探す。数枚捲ったところで、先ほど同様、彼女の顔が目に飛び込んできた。
氏名:・
年齢:24歳
役職:参謀長官
「参謀長官・・・」
見事な戦術で、小さい国ながらもここまでガンマ団を苦しめた張本人・・・。こんな美しく、若い女性にここまでガンマ団が苦しめられたとは。マジックはその資料を読み、考え込んだ。
そして、一つの結論に行き着いた。
彼女が欲しい。女としてではない。ガンマ団の参謀として。
部下に、自室に彼女をよこす様に命じた。
しばらくすると、部下は彼女を連れてマジックの自室へとやってきた。散々抵抗して、それに対して団員が手を上げたのだろう。頬は赤く腫れ、唇が切れて血がついていた。両腕は後ろ手に縛られている。
マジックは部下に部屋から下がるように指示した。
「君が・くんだね?」
「だったらなんだ。さっさと殺せ。」
「本心からそう思っているのなら、とっくに舌を噛み切っているはずだがね?」
「・・・」
は黙り込んだ。自ら命を絶つ勇気はないらしい。言葉に詰まり、ただただマジックを睨みつけるだけ。その瞳には、憎しみが宿っている。
「・・・何故そんな目で私を見る?」
「お前は私たちの国を制圧するために来たのだろう?国民が虐げられる様など、想像したくもない。腕さえ自由になれば、お前をこの場で殺してやる!」
「やれるものならやってみたまえ。」
の方へと歩を進めたマジックは、彼女の腕を戒めていた手錠を外した。瞬間、はマジックへと飛び掛る。馬乗りになり、マジックの首に手をかける。しかし、マジックは全く抵抗しようとしなかった。は力をこめようとしたが、何故か力を入れることができなかった。
「どうしたんだね?早く殺してみたまえ。」
「何故・・・抵抗しない。」
「試したんだよ。君が本気で私を殺すつもりなのか。どうやら、自らの手を血に染める勇気はないみたいだね。」
自分自身を見透かされたは、苦虫を噛み潰したような顔をして、マジックの首から手を離した。その腕は力なくだらりと落ちる。
「さて、退いてくれないか。女の上に乗るのは構わないが、女に上に乗られるのはどうも性に合わないのでね。」
その言葉にハッとしたが、真っ赤になってマジックの上から降りた。
「な、何故私をここへ・・・?」
気を取り直して、はマジックに問うた。その瞳は、相変わらず鋭いものではあるが、先ほどまでの憎しみは幾分薄らいでいるかのように見えた。
「我々をここまで苦しめた参謀長官殿が、どんな御仁かぜひとも会って話がしたかったらだよ。」
ふっと微笑むマジック。その顔に、の心の中では、何かが化学反応を起こしている様に、ゆっくりと熱が広がっていた。心なしか鼓動が早まっているような気さえする。
整った顔立ち、意志の強そうな青い目。真っ直ぐ見つめるその視線、堂々たる態度。どれをとっても完璧なのではないかと思うほど、その男は自信に満ち溢れている。
マジックは、来客用のソファに座るようにを促した。力の強弱だけではなく、何なのかは分からないが、何か別の理由でマジックには勝てないことを悟ったは、マジックの言うなりにソファへと腰を下ろした。
「率直に言おう。君の力が、我々には必要だ。どうだね、ガンマ団の参謀になる気はないかい?」
「な・・・」
は耳を疑った。ついさっきまで戦っていた相手に、自分たちの参謀になれと。
「頭がおかしいんじゃないか?誰が極悪非道なガンマ団の参謀なんか・・・」
「それは誤解だ。確かに、今この国はガンマ団の攻撃を受けている。しかし、私たちの目的は、君の国にある地下の核実験施設の壊滅と、国王、核施設に携わる軍人の抹殺にある。」
「地下の・・・核実験施設?」
「知らないのも無理ないね。君の国の国王と、一部の軍人が極秘に推し進めているプロジェクトらしいからね。それに、この国のメディアは、『ガンマ団はこの国を制圧に来た』と報じているんだろう?我々は、核実験施設を壊滅することが出来れば、国民の生活を弾圧する気など微塵もない。これは、近隣諸国からの依頼なんだ。」
本来なら見せたりはしない資料・・・核実験施設への入り口の写真や、核に関する研究資料をハッキングによって手に入れたものなどを見せながらマジックはに説明した。
は、今まで自分がいいように国に操られていたことを知りまるで国に裏切られたような感覚を覚える。
「・・・核実験施設を壊滅することが出来たら、国民の生活へ手は出さないと約束するか?」
「あぁ。もちろん。君が協力してくれれば、おそらく流す血の量を最少で抑えられると思う。協力してくれないかい?」
「・・・いいだろう」
マジックと、の手は、硬く握手を交わした。
全然恋愛要素ねぇ!!
長くなりそうだったので区切りました。
ラルクの「forbidden lover」エンドレスリピートで書いてます・・・