ふと机を見ると、君が机に向かう姿が浮かんでは消える。
炎を見ると、君が泣きながら笑う姿が浮かんでは消える。
君は神の名を呼びながら・・・炎の中へと消えていった。



−forbidden lover 02−



は、ガンマ団へと協力することとなった。調べれば調べるほど、母国の卑怯なやり口や国民への酷い仕打ちなどが目にはいる。は、今の国王を抹殺することを賛成と思うほどになっていた。
長い抗争の続くの母国とガンマ団。しかし、着々とガンマ団は侵攻を進めていった。もうすぐに地下核実験施設のある領域へと手が届くところまで来た。
はマジックを信頼し、また、マジックもを信頼していた。
その信頼は、いつしか愛情へと変貌を遂げていた。しかし・・・は、その気持ちを決して口にすることはなかった。愛していないわけではない。しかしこの戦火のなか、何が命取りとなるか知れない。女だてらに死線を潜り抜けてきたには、よくわかっていた。また、マジックもその気持ちを汲んで、自らの気持ちを口にして伝えることはしなかった。
お互いの気持ちを知りつつも心を通わせない二人は熱い視線を交わらせながら、作戦会議を進めていく。この戦いが終わったら想いを伝えようと、心の中で思っていた。

早く、想いを伝えたい。
しかし、国民が苦しんでいるのに自分だけ幸せになどなれない。

は、必死で出来るだけ血を流さぬ戦法を考え続けていた。
そんなある日。ガンマ団が駐留している小さな村で、作戦会議が開かれていた。作戦を打ち込んだCD−Rを大きなスクリーンに映しながら、はマジックをはじめとした団員たちに戦術の説明をする。満場一致でその作戦を遂行することと相成った。
その作戦会議が終了し、CD−Rをマジックに手渡したの指が、マジックの手に触れた。

「あ・・・」

・・・私は・・・」

もう、マジックは我慢することが出来なかった。戦場において女は数少ない。それだけが理由ではないが、とにかく彼女を自分のものにしてしまいたかった。この戦いが終わったら、が自分から離れていってしまいそうで・・・。マジックは不安だった。
君のその意志の強い瞳、国民を思う優しい心。全てを愛している。
そう言葉を続けたかった。だが、その言葉は、大きな爆音に掻き消された。

村の学校を借りてガンマ団が作戦会議をしている。そんな情報がの母国へと漏れ、攻撃を仕掛けてきた。外では、団員たちが村人たちを逃がそうとしている声や爆音が響いている。

!早く逃げよう!」

「でも、村人たちが・・・!」

マジックの制止を振り切って、は炎に包まれた村へと駆けていこうとする。しかし、その腕をマジックが掴んで放さなかった。

「愛しているんだ!・・・君を失いたくない。逃げよう。」

「マジック・・・」

の力が少しだけ緩んだ。学校の出入り口のところで立ちすくむ二人。外はすでに戦場と化していた。逃げ惑う村人たち。それを庇いつつ撤退するガンマ団の団員。未だ姿の見えない母国の兵士。
まるでスクリーンの中に映し出されているかのような錯覚に陥るが、それは現実で。
出入り口からマジックがを連れ出そうとした刹那。
学校にミサイルが着弾した。轟音と共に学校は崩れ、炎に包まれる。その爆風にマジックは外へ吹き飛ばされた。その手には、掴んでいたはずのの腕は握られていなかった。

!!」

出入り口であったであろう場所へとマジックは駆け寄る。そこには、瓦礫の下敷きになったの姿が。火の手はすぐそこまで迫っていた。

!今助ける!!」

「マジック・・・逃げて。」

は苦しそうに声を上げる。

「君を失いたくないんだ。愛しているんだ!」

頬に涙が伝う。瓦礫を取り払おうと力を込める。眼魔砲を使って吹き飛ばすのは簡単だが、それではまで傷付けてしまう恐れがあった。いくら力を込めても瓦礫の山はびくともしない。
団員たちが走りより、マジックをつれて逃げようとするが、マジックはそれを振り払いなおも瓦礫の山へと挑む。
火は、無常にもすぐそこまで迫っている。

「逃げて・・・貴方まで死んでしまう・・・」

は必死で声を振り絞った。そして、言葉を続けた。

「愛してくれて・・・ありがとう。私も、貴方のことを愛してるわ・・・だから、貴方になら頼める。この国を・・・救って。お願い・・・」

ーー!!」

火のついた瓦礫が、雪崩のように崩れ落ちてきた。間一髪マジックは団員たちに引き離され、炎の雪崩に巻き込まれずに済んだ。は、涙を浮かべて尚笑顔で、炎の中へと消えていった。

「うおーーーー!!!!」

雄たけびを上げながら、マジックはその場に泣き崩れる。
援軍の戦闘機の音があたりに響き、少し遠くで爆音が響いた。それ以上、相手からの攻撃はなかった。



戦術を記録したCD−Rだけが、マジックに残された。

「この国を救って」

の最期の言葉を守るため、の残した戦術でマジックは地下核実験施設を制圧した。その見事なまでの戦術。ほとんど血を流さずして地下核実験施設を制圧した作戦は、のちのち国際社会でも高い評価を得た。『ミッション:』と名付けられた作戦は、後世まで語り継がれることだろう。

どんな形であっても、彼女が生きた証をこの世に残すことが出来て、マジックは嬉しく思った。

燃え上がるような恋は、それほどできるものではない。戦場で咲き、そして散っていった美しき花は、永遠に彼の心の中に・・・



長いッス!!
昔から、戦争物の映画が好きで。
戦場を舞台として書けるキャラって、
マジックしかいないかなぁ・・・って。
一応、年代としてはシンちゃん生まれてすぐ
あたりを意識して書いてました・・・。
とりあえず、不倫です(爆)!!