ここは天上界の浮遊島の一つ、萌黄島。
常に新緑に包まれるこの島に、まるで場違いのような女が住んでいる。
名を。上から下まで真っ白で、まるで残雪のようだ。
−白銀−
ある日、が外で洗濯物を干していると、人の気配を感じて振り返った。
「誰・・・?」
「わりぃ・・・驚かせたか?」
木の陰から現れたのはリキッドだった。
「リキッド・・・」
は、手に持っているものを見えないように隠した。
「?何隠したんだよ。」
は顔を赤らめながら小さな声で、
「洗濯物・・・」
と呟いた。
「あ、わりぃ・・・」
二人で顔を赤らめて佇む。
「おいおい、二人で何赤くなってるんだよ。リキッド、何しやがった?」
またしても声が聞こえた。声のするほうを振り返ると、
今度は長兄の乱世が立っていた。
「乱世さん・・・」
「よっ、久しぶり!てか、大丈夫か?何もされてねぇか?」
ずいっと近づかれ、また驚いてますます顔を赤らめてしまう。
「人をケダモノみてぇに言うんじゃねぇよ、乱世兄貴!」
リキッドが叫ぶ。
そんな中、少しヒヤッとした風が吹いた。
「に会いに来たのに・・・何でリキッドと兄者までいるんだ?」
次男の忍までやって来た。
「皆さん・・・何なんですか?」
「俺は久々にお前の顔を見てぇなぁと思って来たのさね。」
「俺だって一緒だぜ!」
「俺は、こっくりさんをやってたら出掛けてみるのがいいって出たから、
特にいくあてもなく思いつきでのところに来てみた・・・」
と、各々にのもとに来た理由を話し始めた。
はにっこり笑うと、
「皆来てくれて嬉しいです。洗濯物を掛け終わったらすぐに行くので、
中で待っててください。」
と言って、中へ通した。
さっさと洗濯物をかけるのを終わらせ中へ入り、
急いでお茶の支度をする。そのエプロン姿に見惚れる3人の男。
テーブルに片肘をつき、長男の乱世がニヤつきながら口を開く。
「やっぱいつ見てもは美人だよなぁ♪」
「あんな嫁さん欲しいよなぁ・・・」
と言ったのは、ボーっとを眺めていたリキッド。
その発言に驚いたのは、二人の兄だった。
「リキッド・・・そんなことを考えていたのか?」
「へぇ・・・意外だなぁ。お前も将来のこと、本気で考えるような年になったのか。
成長したなぁ、リキッド。兄ちゃんは嬉しいぜ。」
「う、うるせー!」
その賑やかな会話に、不思議と笑みの零れる。
もちろん、内容は理解していない。
「楽しそうですね。兄弟3人そろうなんて、珍しいんじゃないですか?」
お盆に茶器一式とお菓子の入った器を乗せ、
キッチンから3人の待っているリビングへと入ってきたの笑顔に目を奪われる。
「まぁな。まさか俺らが皆のとこに集まるとは思いもしなかったけどな。」
と、長兄の乱世が器に盛ってあったクッキーを一つ頬張りながら答えた。
「そうですね。皆、私に会いに来てくれるなんて嬉しいです。」
お茶を汲みながら、楽しそうに話す。
どうやら、3人がどういうつもりで訪ねてきたか、さっぱり理解していないらしい。
天界兄弟の話です。
これもメルマガで配信したやつなので、
やたらと長いです。
さて、この後どうなりますか・・・。