何年前だったか定かではないが、惑星全体に広がる広大な森の中で、
一つの命が燃え尽きた。
美しい少女の亡骸の横には、金髪の青年が佇んでいた。

「・・・悲しすぎると、涙なんて出ないものなんですね・・・」

誰に語るわけでもなく、青年は呟いた。



−瞬間−




森の中で主を守りながら、一体何年の歳月が流れたのか。
今日も一人、物思いに耽る青年、雷。
一人で過ごすには長すぎる時間。それでも一人で居ることを選んだ。
人間が信じられなくて。

がさがさと草の揺れる音。その音のする方へ鋭い眼光を向けた。
そこには満身創痍の少女が立っていた。

「こんなところで何をしている?!」

「・・・」

その少女は、何も言わずにその場に倒れこんだ。
そのまま放っておくこともできず、仕方なくらいはその辺に生えている薬草を集め、
少女の看病をした。少女が目覚めたのは、その3日後。

「ん・・・ここは・・・」

「やっと目が覚めました。」

目覚めた少女に、雷は声をかけた。その少女は怯えた瞳で雷を見つめる。

「手当てしてもらっておいて、礼もいえないんですか?
たいしたお嬢さんですね。」

少女を睨みつける。その時少女が放った言葉。

「どうして死なせてくれなかったの?」

「・・・は?」

その言葉に、雷は耳を疑った。それと同時に怒りが込み上げてきた。

「命を救ってもらっておいて、その態度は何なんですか?!
だったら、望み通り殺してあげますよ!」

胸倉を掴み、殴ろうとする。少女の瞳は空虚なまま、空を彷徨っていた。
その心を感じさせない瞳に、何故か心を奪われた雷。

「・・・名前は?」

・・・」

「なぜここに?」

「・・・」

は静かに語り始めた。
生まれてこの方、誰からも必要とされたことがなかった。
空虚な存在。
他人からは、景色の一部としか感じられない存在だと言った。
悲しそうな瞳。
その瞳に、何故か心を惹かれる。
雷は、黙っての話を聞いていた。

「一人で命を絶てなかった・・・森へ来れば、何かの拍子に死ぬことが出来るかと思って・・・」

そう言うと、は口を噤んだ。
森には、木々かそよぐ音が響いていた。

「・・・気の済むまでここに居ればいい。
何かよい解決策が見つかるかもしれません。」

雷の白く細い指がの髪を滑る。
の瞳からは大粒の涙が零れ落ちた。
そのまましばらく、の涙は止まらなかった。


後編


雷ですよ。
特定の相手が居るキャラ(彼の場合は刃/爆)の
ドリームは書いてて難しいですが・・・
結構楽しんでます(笑)。