私、夜勤が苦手なの・・・
ここは人間の病院じゃないけど・・・
その分変な音とかしてさぁ・・・マジ無理。
夜に働くのは苦痛じゃないんだけど・・・
しかも!!夕飯食べてるときにテレビで心霊番組やってたんだから!!
一緒に夜勤の看護師は楽しそうにそれ見てるしぃ・・・
助けて。マジで。



−深夜病棟 25時−



R.E.D医局第三科の獣医師、は盛大に溜息をついた。そろそろ24時を指そうとしている時計の針。そろそろ患畜を見回りに行かなければならない。が一番恐れる時間。
勇気を振り絞って懐中電灯を手にする。

「はぁぁぁ〜・・・」

三科では、何故かクールで怖いもの無しのイメージがついてしまっている。それもこれも、体調を崩して三科に来る前には二科で働いていたからなのだろう。元々その時から夜勤は苦手だったのだが・・・。
まだ二科のほうが良かった。は海洋生物を中心に扱っていたため、出張が多かった。その為、しばらく二科で仕事をしたものの、夜勤をしたのは数える程度で。
しかしながら、三科では出張がほとんどないから、夜勤は必然的にやってくるのだ。

キィっと三科医局のドアを開けると、

「・・・先生?」

と、後ろから仮眠中だったはずの看護師の声が聞こえた。その声にさえ過敏に反応する。あんまり驚くと人は声など出ないもので。少し落ち着いてからゆっくりと振り返ると、笑顔で

「何?」

と尋ねた。自分では笑顔のつもりだったのだろうが、看護師から見るとその笑顔はかなり引きつっている。

「・・・もしかして怖いんですか?」

看護師が悪戯っ子のような目で見てくる。何故かクールなイメージを作り上げられてしまっている。それに、はかなりプライドが高い。

「な、んなわけないでしょ?!アンタ、まだ仮眠時間一時間あるんだから、ゆっくり寝てなよ。」

と、踵を返して三科医局を飛び出した。
・・・はいいものの、やはり恐怖は抜けないもので・・・。昔から心霊番組しかり、お化け屋敷しかり、はそういう類のものが苦手だった。
外見も古いが、それは中だって同じこと。あちこちガタがきた大きな病院は、否応無しに不気味な雰囲気を醸し出している。外から月明かりが差し込むことだけが唯一の救いか。
入院患畜のいる病棟にせかせかと歩を進める。

ガサガサ・・・
ガタガタ・・・
モソモソ・・・

昼間はあれほど聞きなれた音なのに、夜だと言うだけでいちいちその一つ一つに過敏に反応してしまう。
キィ・・・と三科入院患畜入院室へ踏み入れると、どうやらスヤスヤと皆夢の中を彷徨っているようだ。一安心したは、三科医局へ戻ることにした。

しかし、事件は起こったのだ。

二科入院患畜入院室の前を通り過ぎようとした時・・・

パリーン

という、ガラスの割れるような音と、動物の唸り声。威嚇するようなその声に、我を忘れてその部屋に飛び込むと・・・ヌッと目の前に大きな人影が。電気さえついていないでそれがなんなのか分からないは、

「・・・・!!!!」

ギュッと目を瞑り、必死で頭をガードした。

「何・・・してるんデスカ?先生・・・」

その優しげな声に恐る恐る目を開けると・・・そこにはかつての同僚、木々樹リンの姿が。
安心してなのか、はヘタリとその場に座り込んでしまった。いや、腰を抜かしてしまったといったほうが正しいだろう。

「大丈夫デスカ?」

優しく手を差し伸べる木々樹の手を、やっと我に返ったが取る。すると木々樹は、グッと引っ張り起こした。

「そういえば、先生は夜勤が苦手でしたネ。」

クスリと笑い声を立てた木々樹は、窓から差し込む月明かりを浴びて、いつもの優しい雰囲気がさらに丸くなっているように感じた。そんな姿に見惚れていただが、さっきの音について疑問を投げかける。

「さっき、何か割れる音がしたんだけど・・・」

「あぁ、ここに見回りに来て、何かにぶつかって落としたミタイデ・・・今、電気をつけてそれを確かめようとしたところデシタ。」

つまりは、見回りに来て静かに見回ってそのまま出て行こうとした際に薬の瓶か何かにぶつかってそれが床に転落して割れて。その音に驚いた入院患畜が威嚇を示す唸り声を上げた。電気をつけなければ落としたものを片付けられないと思い、入り口横にある電気のスイッチへ手を伸ばしたときにが入ってきた。は窓からの逆光となった大きな人影をとっさに判断することが出来なかったのだ。

「なんだぁ・・・」

「相変わらず怖がりデスネ、先生。一緒に仕事したときカラ変わってないデスネ。」

「小さい頃から怖いんだから仕方ないでしょう・・・」

プゥッと膨れてみせるの顔を見ながら、木々樹は少し困ったような笑顔を見せた。かつて一緒に泊り込みの仕事をしたときも、夜になると異常にビクビクしていたのを思い出す。

「そんな先生が、僕は可愛いと思いマスヨ?いつもクールに決めている先生も好きデスケド、こうやって怯えている先生も可愛くて好きデス。」

にっこりと微笑まれ、の顔は月明かりでも分かるほどに赤く染まった。さっきまで威嚇を示す唸り声を上げていた患畜も平静を取り戻したのだろう、安らかな寝息を立てていた。

「患畜たちもぐっすり寝ていることデスシ、明るくなってから片付けることにシマス。さ、戻りましょう?」

そういって、ふわりと木々樹はの手を握って、二科入院室からを連れ出した。その握られた大きな手が、にとってどれだけ心強かったか。きっと木々樹はわかってはいないだろうが、昔一緒に仕事をしたときのことを思い出す。

大丈夫・・・何も怖くないデスヨ?

そう言ってあの時撫でてくれた大きな手が、今は自分の手を握っている。それだけでは心が満たされるような気がした。木々樹が一緒なら夜勤だって怖くないのにと・・・思う。
いつの間にか、の心の中から恐怖は色あせていた。
廊下にかけられた時計は、深夜25時を指そうとしている・・・



正直、私も夜勤は苦手です(夜勤有の仕事なんで)。
何って仕事がきついんですが、
私の職場は誰も使ってないのにトイレが流れたりします(ヒーッ)。
あと、誰もいない部屋からナースコールなったり。
もう慣れましたけど(んなこと慣れんな)。

あー、リン先生に守ってほしー(妄想炸裂)☆