僕は、貴方が思っているほどいい人じゃないですよ?
好きな女の子を苛めてしまう男の子と同じように、
僕は貴方をからかってしまう。
それは、貴方が好きだからだと・・・
分かってくださいね?



−確信犯−



R.E.D医局第二科で働く獣医師、。彼女は二科でも海洋生物を主に扱っている。海洋生物を扱っているにも関らず、たまの休みには海に遊びに行くのではなく山に遊びに行くほうが多かった。
非番が明けて日勤の日。
二科の医局に行くと、そこには穏やかな顔をして外を眺める、同じく二科の獣医師兼樹木医、カナダ人と日本人のハーフの木々樹リンが一人。

「おはよう、リン先生。」

「あぁ、オハヨウゴザイマス、先生」

穏やかな微笑みは、まるで木漏れ日のようだと、いつも思う。そんな木々樹を眺めるだけで、は癒されるような気がした。

「今日ハ、司も鞍智くんもいませんカラ、結構大変だと思いマスヨ?」

と、いつもの笑顔で語りかけてくる木々樹。その笑顔で大変だと言われても、説得力がないと、は思った。木々樹の笑顔に心臓が高鳴ることに気がついたのは、木々樹がカナダに出張に行く少し前のことだった。気がついたとしても彼はすぐにカナダに行ってしまうのだからと気持ちを押し殺したのだが、二年後彼が戻ってくるとその押し殺した感情は二年のブランクを埋めるかのように一気に膨れ上がってしまった。それを抑えるのは至難の業で。とうとうには抑えきれず、すっかり木々樹にご執心なのだった。
それを知ってか知らずか、木々樹は盛んにに話しかける。もともと仲は良かった。でも、きっと今更という感じだろう。そう思って、なかなか気持ちを口に出来ないの苦悩を、木々樹は知っていて楽しんでいるようでもあり、また何も知らないようにも見える。捉えどころのない、自由になった風船のようだ。

「・・・先生?」

適当に話に相槌を打っていたに、ふと木々樹が顔を近づけた。

「な、何?!」

その奇妙な行動に驚いて、思わず声を荒げてしまった。の白い頬にフッと朱が混じる。

「昨日、もしかして森ヘ行きましたカ?」

「え・・・」

確かに行った。趣味である写真を撮りに。海の生物を主に診察しているにとって、山の小動物はとても新鮮なものだ。その写真を撮ったり、森の写真を撮ったり。よく非番の時にはカメラを片手にバイクで遠出する。

「アレ、僕の勘違いデスカ?」

ちょっと申し訳なさそうな顔をして、を見つめる木々樹。は立っていて、木々樹は座っているのに、目線がちょうどいい。それは木々樹が標準以上に身長が高く、が標準以下の身長しかない証。

「い、行ったけど・・・良く分かったわね?」

「まるで雨上がりの森のような、イイ匂いがしますカラ。」

にこっと笑ったその笑顔こそ、雨上がりの森のように清々しいものなのではないかと、は顔を赤らめながら思った。

「もしヨカッタラ、今度非番が重なるトキは、一緒に森に行きませんカ?貴方の知らないこともイッパイあるでショウ?僕が教えてあげマス。もちろん手取り足取りネ。」

「・・・///アンタ、意味わかって言ってるの?」

分かってるつもりです、と、悪戯っ子のような笑みを浮かべる木々樹。は、この人は絶対に確信犯だと信じて疑わないのだった・・・



今度はみじけぇ!!
リンは、絶対に好きになった女の子は
苛めてたと思う。
それか、断られてもアタックし続けていたか(笑)。
ちょっと腹黒気味のリン先生を書いてみました。
今度は後者のほうを書いてみようかな。