見たこともないカッコいい男の人が私の肩を掴んで一言、ポツリと。

「これから先10年、彼氏を作らないでください。」

10年待てば、何かいいことがあるの?ねぇ教えて。貴方ならわかるの??



−初恋の人−



は今日も上の空だった。それは、別に期末テストの点数が悪かったわけでも、母親と口喧嘩したわけでもない。

1週間前のこと。幼馴染のツナの家に届け物をしてきてほしいと母親に言われ、言われたとおり荷物を持ってツナの家へと向かった。は私立の中学に通っていたため、最近は滅多にツナに会うこともなくなっていた。久しぶりだなぁと思いつつ、玄関の前に立ちチャイムを押そうとしたその時、いきなり扉が開き、男がぬっと現れた。
フワフワとした髪に、牛柄のシャツ。優しそうなその面立ちが、を見たとたんにサッと険しいものに変わる。それをは見逃さなかった。

私、何かしたかな・・・

一瞬にしてそんな不安がよぎる。

「ま、待てよランボ・・・!あ、ちゃん?!」

階段からバタバタとツナが駆け下りてきた。

「あ、久しぶり、ツナ。これ、お母さんがおばさんに渡してって・・・」

「あぁ、うん、ありがとう」

そんなやり取りを、牛柄のシャツの男が不機嫌そうに見下ろしている。
その視線が痛く、ちらりとその男の顔を見る。すると見事に目が合ってしまった。慌てて目線をそらす。するとその男は

「若き日のさん。」

と、のことを呼んだ。「若き日」という言葉が若干気になったが、

「は、はい?!」

とその言葉に反応して牛柄の服を着た男を見上げると、ガシッと肩を掴まれ、頬に口付けを落とされた。

「・・・へ?」

「んな?!」

横目でツナの事を見ると、凍りついたかのように固まっている。

さん、これから先10年、彼氏を作らないでください。」

その男は一言ポツリと言うと、そのまま玄関から出て行ってしまった。とっても不機嫌そうな様子で。
その場に取り残されたのはツナと
ポカーンと彼の出て行った開いたままの玄関を見つめていると、視線の下にもこもこと動くものがいるのに気がついた。下を見ると、牛柄の全身タイツ?みたいな服を着た子供がしゃくりあげている。

「ランボ!」

ツナがその子供を呼んだ。

「え、ランボって、あの男の人もランボって名前よね・・・?」

「う、えと、結構説明が複雑で・・・」

その日は塾があるため、長い説明は聞けなかったので、一週間後の今日、ツナのところに行って説明してもらおうと思っているのだ。

「お邪魔します。」

「あ、本当にきたの?ちゃん!」

「えぇ。さ、聞かせてもらおうかな?『結構説明が複雑』な説明を。」

「あ、うん・・・」

とりあえずツナの部屋に通された。
そこには、子供のランボがいた。

「僕が説明するより、本人に説明してもらったほうが早いと思うから・・・ランボ、10年バズーカ、自分に打てよ。」

「やだもんね。ツナの頼みなんて聞かないもんね」

「ランボぉ〜」

ツナが困っている。まぁ、小学生のころから下級生の面倒を見るのは苦手なほうだったんだから、仕方ないとは思うが。

「ランボくん、私10年バズーカ見てみたいなー。」

「・・・仕方ないな!見せてやるからちゃんと観てろぉ!」

どーーーーん!!!!

「な、ちょっと?!本当にバズーカなの?!ランボくん死んじゃう・・・」

「死にはしませんよ。この時代に生きている自分と、10年後の自分が入れ替わるだけですから。」

煙が消えると、そこには1週間前に「彼氏を作るな」と言った方のランボいた。

「・・・ランボくんは?」

ツナに尋ねると、苦笑いをしてあとは二人で、と言い残して部屋から出て行った。

「ちゃんと説明します。10年バズーカというのは、今この時間に生きている自分と10年後の自分を5分間入れ替えることのできるものです。」

「は、はぁ、で、貴方が10年後のランボくん・・・なの?」

「そうです。」

まあ、あの面白フェイスな子供がここまで美形に育つものだとは口には出さずに驚いた。

「私の今までの常識外の話だけど・・・それは、貴方が元に戻れば証明できるでしょうから、とりあえず今は信じるわ。で、『これから先10年彼氏を作るな』と言ったのは何で?」

「・・・」

いきなり不機嫌そうな顔に変化するランボ。なんか、見た目は大人なのに心は子供なんだなーと思わせるその素振り。

「・・・あの時は、10年後の貴方と喧嘩していたんです。・・・自分は初恋だったのに、貴方は昔彼氏がいたことを黙っていたから・・・」

「私に昔彼氏がいたことに怒っていたって・・・あの、それって・・・」

「お察しの通り、10年後の貴方は自分の恋人です。」

「は?!」

嘘だろう。あんなアフロで鼻水をずるずる流しながらないている子供と自分が付き合っているなんて。まぁ、この目の前にいる大人になったランボならありかとも思うけれど。

さん・・・」

ランボの顔が近づく。そのまま唇に優しくキスをした。

ファースト・・・キス・・・

は何が起きたのか一瞬のうちに理解できずポカンと口を開けたままランボのことを眺めていた。今・・・キス・・・されたよね?初めてだったけど・・・すごく自然で。ぜんぜん嫌な感じがしなかった。ふわりと抱きしめれる。微かに鼻をくすぐるさわやかな香水の匂い。

さん、愛しています。自分は、今までもこれからも、貴女以外のことは愛せない・・・だから、お願いです・・・貴女も・・・おれだけの貴女でいてください・・・おれはずっと・・・貴女のものです」

「ランボ・・・くん・・・」

「そろそろ時間です。また会いましょう、若き日のさん。今も10年後も、貴女のことを愛しています」

そう呟くと、ボフンと白い煙を上げて10年後のランボは姿を消し、目の前には腰に手を当てて自慢げな5歳のランボが立っていた。

「どーだ?!すごかっただろう!!!がはははははは!!」

その声にやっと我に返ったはさっきのキスの感触を思い出す。思い出しただけで恥ずかしい・・・見る見るうちに顔が赤くなっていく。

ちゃん?大・・・丈夫?」

ツナの部屋から出て玄関に向かおうとしていたに、ツナが声をかけた。

「大・・・丈夫。」

「あんまり大丈夫そうに見えないけど・・・」

「いや、大丈夫よ。ごめん、帰るね。」

「うん・・・」

短い会話を交わし、はツナの家をあとにした。

抱きしめられてもキスをされても嫌じゃなかった・・・。今まで感じたことのない感情・・・。
10年後の恋人が初恋の相手だなんて・・・。
もにわかには信じられなかったが、の心の動きは今までに感じたことのない熱を帯びていた。

10年・・・彼のことを信じて待とう。あの牛柄の子供が、私に向かって愛を囁ける日が来るまで。

ランボさんです。
こういう設定のキャラってあまりいないから、
書いてて楽しかったです。
まぁ、似非ですがね・・・。