本日はガンマ団の新総帥、シンタローの誕生日!
元総帥であるマジックに溺愛されているシンタローの誕生日は、当然の如く盛大なパーティーが催される。もちろん主催者はマジックだ。
−愛の逃避行−
シンタローの恋人で、秘書として働いているは、今日中に済まさねばならない仕事が多く、必死でパソコンに向かっていた。大事な恋人の誕生日。そのパーティーに、恋人が遅れて登場するわけには行かない。やってもやっても減らない仕事。自然とキーボードを打つ音も高くなる。
すると、秘書室に向かって豪快な足音が響いてきた。・・・明らかに全力疾走。この走り方・・・間違いない、彼だ。
「!!」
「し、シンタロー様?どうなさったんですか、そんなに急いで・・・」
「匿え!」
「はいぃ?!」
そういうと、先日買った大型のロッカー(まだ何も入っていない)の中に入ると、勢いよく自分で扉を閉める。あまりの出来事に驚いてポカンとしているの元に、また新たな足音が近づいてくる。・・・今度は、荒い呼吸つき。
「君・・・」
「は、はい!!」
振り返ると、そこには肩で息をしている、元総帥マジックの姿があった。(あぁ、だから逃げてたのね・・・)と内心納得して、シンタローを匿うことに決めた。
「シンちゃんが来なかったかい?」
息を整えながらに質問するマジック。(さすがの元総帥でも歳には勝てないのね・・・)とか一人で思いを廻らせながら、白々しくも
「存じませんわ。」
とにこやかに返答を返す。
「本当かい?こちらに走ってきたということは、絶対に君のところだと思ったんだがね・・・。おや、あれは新しいロッカーかい?何が入っているんだね?」
「えぇ?!えっとぉ・・・」(やばい、あそこにはシンタロー様が・・・)
「どうかしたのかな?」
マジックは訝しげな視線をに向ける。まるで蛇に睨まれた蛙。冷や汗が背中を流れ落ちるのを感じる。マジックはゆっくりとロッカーに近づくと、扉に手をかけようとする。
「ま、待ってください!」
その行動をの鋭い声が制した。
「なんだね?見られちゃ困るものでも入っているのかな?」
「し、私用で使ってすいません!そのロッカー、資料を入れるために購入していただいたんですが、まだ何も入っていないので、今夜シンタロー様の誕生パーティーに着ていくドレス、隠してあるんです。家に戻る暇がないので・・・。その・・・し、下着とかも。」
と口からでまかせを言ってのけた。さすがに「下着とか」といえば、開けたりしないだろうと、ちょっと恥ずかしい発言もしてみた。ここまで言って開けるようなら、はっきり言ってただの変態である。普段ならば嘘をつかないだが、(何故かは知らないが)恋人のピンチである。ここで助けなければ女が廃るというもの。
「・・・そうか。シンちゃんの恋人である君のドレスを、シンちゃんよりも前に見るのはいけないね。今日のところは見逃してあげるけど、今度からは私事でロッカーは使わないようにしたまえ。」
「は、はい、すいません・・・」
マジックはそう言い残すと、秘書室をでて「シンちゃ〜ん!」という叫び声をあげながら遠ざかっていった。
は「はぁっ」と大きな溜息をつくと、
「シンタロー様、もういいですよ。」
とロッカーに向かって言った。中から、ばつの悪そうな顔をして、おずおずとシンタローが出てくる。
「悪かったな。」
「いいえ。どうなさったんです?」
「あの親父、今夜のパーティーに自分とお揃いのピンクのスーツを着せようとしやがってよぉ・・・」
「ぴ、ピンク?!」
その姿を脳内で想像してしまったは、あまりに可笑しくて声を殺して大爆笑した。その様子を片方の眉を吊り上げながら不服そうに見つめるシンタロー。
「あー、パーティーなんてウゼェ!」
「あら、誕生日を祝ってくれる家族がいるんですから、いいじゃないですか。」
「・・・家族なんかより、祝ってくれる恋人と二人きりで過ごしたいけどな・・・」
そういうとシンタローは、優しくのことを抱きしめる。
「し、シンタロー様・・・私、まだ仕事が・・・」
「そんなん明日でいい。おら、行くぞ。」
「ど、どこにですか?」
シンタローは唇の端を引きつらせるようにニヤッと笑い、を抱えあげた。
「逃げんだよ。パーティーなんてクソ食らえだ。」
「えぇぇぇぇ?!」
そのままシンタローは全力疾走でガンマ団の敷地を抜けて・・・二人きりの誕生日を過ごせる場所までを攫っていった。あとに残されたのは・・・電源の入りっぱなしのパソコンと、書類の山だけだった。
その夜のパーティーに、シンタローとが姿を現わさなかったのは言うまでのない。
ハッピーバースデー、シンちゃん♪
シンちゃん夢・・・のはずなのに、何故かあまり出てきません。
マジックに追い掛け回されるシンちゃんが書きたくて・・・
ちなみに、キンちゃん夢とちょっとリンクしてたりします。