・・・たまにはお洒落でもしたらどうだ?」

滅多に口を開かない彼が不意に口にした言葉。
その言葉には、嬉しいような恥ずかしいような、
むず痒い気持ちを覚えていた・・・。


−親馬鹿−
第2章



「・・・なんでそんなこというの?」

目を丸くしては聞き返す。
目の前には大柄な寡黙な男、Gが座っていた。
この男、見た目こそはごついが・・・
何を隠そう、無類の可愛い物好きである。
二人で買出しに出たときなど、さえも目をくれない、
ピンクのフリルがふんだんに使ってある可愛いドレスの飾られたショウウィンドウの前で必ず足を止める。
そんな様子を見ていて、「相当好きなのね・・・」と思いながら、あまり見られない彼の一面を微笑ましく思っていたのだが・・・。

「あの、一応聞くけど、Gの言ってるお洒落って、まさかピンクのふりふりの・・・とか、そういうののこと言っているわけ?」

無言で頷く大男。
そりゃぁ、特戦部隊の隊員たちと同じ革ジャンに革パンという、女らしさの欠片もないような服を着てはいるが・・・そんないきなり、ピンクのふりふりのドレスなんて・・・着れたもんじゃない。

「無理!!絶っっっっ対!!!ありえないから!!」

首がどこかに飛んでいってしまうんじゃないかというほどに、は首を横に振る。しかも、珍しく顔が真っ赤。おそらく、自分がピンクのふりふりのドレスを着ている姿を想像してしまったんだろう。見ているこっちが恥ずかしくなるほどに真っ赤になっている。

「絶対似合うと思うんだがな・・・」

Gがスッと視線を逸らす。その視線を追うと・・・そこには、可愛らしい紙袋。その紙袋には・・・Gが必ず足を止める、例のピンクのドレスのショウウィンドウの店の名前がはっきりと印字されている。

「ま、まさか・・・買ってきた・・・とか言わないよね?」

「・・・そのまさかだ。」

「嘘ー!!」

、絶句。そりゃ、たまには革ジャン革パンではないもう少し女らしい服を着たいと思うことはある。しかし、しかしだ。女らしいを通り越して、いかにも少女、という感じのドレスなんて、この歳になって(まだ17歳ではあるが)着たいなんて思わない。

「やはり・・・着てくれないか。」

シュン・・・と、しょぼくれてしまったGを見て、の心は罪悪感に苛まれた。少なくとも、Gには悪気はない。むしろ、のことを可愛く思っているが故の行動。もともと、頼まれたことを断ることのなかなか出来ない(※ロッドがデートorベッドに誘うのは別問題)は、その好意をありがたく受け入れることにした。

「・・・ありがとう。もらうわ。着て見せればいいんでしょ?」

は、Gに苦笑いを向けたが、当のGは嬉しそうに微笑んでいる。ドレスの入っている紙袋を渡されると、中からガチャガチャという音がした。

「?入ってるのってドレスだけじゃないの?」

「化粧品・・・一式。折角だからと思ってな。」

「け、化粧品まで・・・買って来てくれたんだ?」

呆れたという域を通り越して、言葉も出ない。私をそんなに可愛く仕立てたいのか、この男は!!と、半ばも投げやりになってきた。

「着替えてくるから待ってて!!」

ピンクのドレス姿なんて、G以外の奴らに見せられない。ロッドなんかに見られたら、速攻でその場で押し倒されそうだ・・・とか何とか思考を廻らせながら、紙袋を開ける。そこに入っていたのは・・・てっきりピンクのふりふりのドレスだと思いきや、薄い水色のドレスだった。フリルはふんだんに使われているものの、少女のような趣のドレスではない。大人の女性を感じさせる、爽やかな色使いとデザインのドレスだった。

「確かにふりふりだけど・・・これならいいかな。」

そう呟きながら、袖を通す。身体のラインがはっきりと見えるが、隠すよりもかえって細く美しく見える。
部屋のテーブルの上に置いてある鏡に向かって、今度は化粧を始める。今まで、化粧をしたことは数えるほどしかない。それも自分でしたわけではなく、特戦部隊の皆が飲みに行った、女性のいる店でその店で働いている女性たちにまるで玩具の如く顔にファンデーションやらアイシャドウやらを塗られたが、恥ずかしくて特戦部隊の面々に見せたことはない。店の女性たちがしてくれたメイクを思い出しながら・・・は化粧をしていく。
出来上がったころには、いつものは鏡の中にはいなかった。初めての割にはうまくできたので、早くGに見せようと、部屋を飛び出して、談話室に向かった。・・・と、飲みに行っていたハーレム、ロッド、マーカーも帰ってきていて、4人そろって談話室で話をしていた。

「げっ!」

思わず女らしくないセリフを吐くと、その声に気付いて4人がいっせいに視線を向ける。

「おお!!」

「ほう・・・」

「すっげー!!綺麗じゃん!!」

「・・・」

皆の目が自分に釘付けになっているのがわかる。あまりの恥ずかしさに部屋へ引き返そうとしたが、それを養父であるハーレムが許さなかった。腕を掴まれる。

「いやぁ、綺麗に成長したじゃねぇか。いつまでもじゃじゃ馬のはねっ返りじゃなかったんだなぁ。」

と、上から下までまじまじと見回す。

「隊長・・・恥ずかしいですからやめてください。」

、何も恥ずかしがることはないぞ。美しい。」

「あ、ありがとう、マーカー・・・」

「G、グッジョブ!ねぇ、隊長、マジでのこと、俺の嫁さんにくださいよぉ。幸せにしますから。ね、、俺と結婚しよ!」

「誰がテメェなんかにやるか!!こいつはなぁ、昔、『私、大きくなったらハーレムのお嫁さんになるのv』って、そりゃあ可愛らしいこと言ってたんだぞ?な、。」

「そんなの知らないよぉ!」

「・・・一体いつの話ですか、隊長。」

「あぁ・・・5歳くらいか?」

「「「「本気にするな!!」」」」

思わず4人はもって突っ込みを入れる。隊長に対して。以外の3人にガンマ砲をぶっ放そうと構えたハーレムを、飛行船の中だからと慌てて宥める

「ま、何はともあれ、お前も女だしなぁ、制服ももうちょっと考えなきゃならねぇな。」

その夜は、のこれからの制服について特戦部隊の面々で話し合った。その話についていけずに、当のが傍観者と化していることを誰も気付かぬままに・・・



数日後。



「G、何で私にドレスを買ってきてくれたの?」

「・・・お前は、可愛いと思う。もっと自分に自信を持って欲しかった。俺はお前のことを、妹のように思っているからな。自分の妹が可愛ければ、嬉しいだろう?」

「そうだったんだ・・・ありがとう、G。」

Gは満足そうに微笑んでいた。それから、何も印字されていない紙袋をに手渡した。

「新しい制服だ。」

「本当?!」

ががさがさと紙袋を開けると・・・可愛い。確かに可愛い。しかし!!これはどう見てもメイド服にしか見えない。

「あ、あのさ・・・これって・・・」

「皆で話し合って決めた。どうだ、可愛いだろう?」

「誰が着るかー!!」

の叫び声は累々と響き・・・特戦部隊の飛行船の計器を狂わせたという・・・。



はい、親馬鹿第2弾です。
親馬鹿といったら、「昔は父さんの〜」
って言う話かと思って書きました。
・・・あんまり、ハーレムが出てない(爆)。
って言うか、今更ですが!!
これ、ハーレムが親馬鹿だ、って話で、
ハーレム夢では決してありませんので、あしからず。