この作品は、俗に言う「裏」ではないですが、 |
お母さんが・・・お母さんが町内会の集まりにさえ行かなければ!!
私はこんなことにはならなかったのに・・・
如何してくれるのよ!!
−お持ち帰り−
彼女の家は、銭湯を営んでいた。
いつもは母がこの番台に座っているはず。
でも・・・でも今日は!!
母親は町内会の集まり、父親はぎっくり腰。
お爺ちゃんとお婆ちゃんは、仲良く温泉旅行。
この銭湯を毎日使ってくれている学生も多いから、休むわけにもいかず。
仕方なくこの日番台に座ったのは、一人娘の。
番台というからには、男女どちらの脱衣所も見えるわけで。
まだ学生の彼女にとって、番台に座ることは恥ずかしいことこの上ない。
ファッション雑誌を捲りながら、暇そうに番台に座っていると、高校生の男の子達が入ってきた。人数は・・・5人。その中の一人があまりにも美形で、思わず見蕩れてしまう。
「こんにちは・・・あれ、今日はさん?」
高校生の男の子たちのうちの一人、たまにうちの風呂に入りに来る、カズキくんが声をかけてきた。その声にはっと我に帰る。
「あ、うん、お母さんが町内会の集まりで・・・」
「そうなんだ。あ、この人。先輩の早坂秋水さん。」
「どうも・・・」
こんな美形とお近づきになれるなら、番台も悪いもんじゃない。そんなことを思いながら、笑顔で挨拶を返した。
彼らは料金をめいめいに差し出すと、中に入っていき、さっさと着ているものを脱衣籠へと放り込むと、曇ったガラス戸の向こうへ吸い込まれていった。
少し静かになった脱衣所。またファッション雑誌に目を落とすと・・・すぐにまた入り口の開かれる音。今日は満員御礼ね・・・そんなことを思いながら、
「いらっしゃいませ」
と声をかけて雑誌から目を離すと・・・目の前には、蝶々の仮面をつけた男が立っていた。
「やぁ。」
にっこり微笑む蝶々仮面の男。
「・・・」
何も言い返せない。
「番台さんにしては、随分と若くて可愛らしい子だね。入らせてもらうけど、構わないかな?」
お金を差し出しながら、蝶々仮面の男は妖しく笑う。その妙な色気に翻弄されてしまった。まさに「心ここに在らず」の状態。
蝶々仮面の男は番台に料金を置くと、さっさと服を脱いで中に入っていった。その様子をポカーンとして眺めていたがあとで気付いたこと。
「あの人・・・仮面とらないでお風呂に入ってったよね・・・顔とか髪、洗わないのかしら?」
と、どこかでずれている思考を廻らす。
少々ボーっとしたまま、お客さんの相手をしていた。何度か計算を間違ったりしたが。気のいい近所のおじさんたちは、そんな些細な間違いを「まったく、可愛いねぇ」と受け流してくれる。はそんな雰囲気が大好きだった。
例の蝶々仮面の男が中に入っていって、何分ぐらいたっただろう。不意に、男湯の方から叫び声、それに準じてどよめきが聞こえてきた。今は一番お客の多い時間帯。今男湯に入ろうものなら、男のマッパのオンパレード。さすがにそんな中に入っていく勇気は、うら若き乙女であるにはない。
不思議に思いながら、そのどよめきの正体を知りたくて。・・・まぁ、なんとなく理由は分かっているけど。どうせ彼でしょ。蝶々仮面の男の人。
どよめきの収まらぬ中、男湯へと続く入り口が開かれて、中から真っ白い湯気が出てくる。その中心にいたのは・・・やっぱり、彼。蝶々仮面。
「番台さん!フルーツ牛乳一本!」
と声をかけられ、慌ててフルーツ牛乳を近くの冷蔵庫の中から出そうとするも・・・一瞬にして凍り付いてしまった。
「お、お客さん・・・桶は中に置いてきて・・・って言うか、なんで手を使ってないのに隠せてるの?!!!」
なんとなく。なんとなく理由は分かっているけど。確かめずにはいられない。
「そんなの、戦闘体制完了してるからに決まってるじゃないか☆」
「・・・」
言い返す言葉もございません。はい。
「ところで番台さん。名前は?」
平然と手渡されたフルーツ牛乳に口をつけながら、一段高い番台に座っているを見上げる彼の瞳。
「・・・。」
「可愛い名前だ。、折角、俺は今戦闘体制完了しているわけだし、これから、どう?」
「どうって何が!!!」
真っ赤になって思わず大きな声で叫んだその時。
「こら、!!お客さんになんて口きくんだい!すいませんね、お客さん。」
グッドタイミングなのか、バッドタイミングなのか。この銭湯の名物女将、のお母様のご帰還。
「いや、構いませんよ。あんまり可愛いから、デートに誘っていただけです。」
「あら、いやだよ、こんなはねっ返りの娘でよかったら、よろしくやってくださいな。よかったわね、。」
「よくない!!」
「番台にはアタシが座るから、その人と行っておいでな。」
「なんで??!」
「お母さんのお許しも出たんだ、行こうか☆」
と母親が言い争いをしている最中に、さっさと着替えを済ませていたらしい蝶々仮面が、の腕を掴む。着替えたとはいっても、彼のさっきまで風呂桶のあった部分は未だ戦闘体制待機中である。
「ちょっと、お母さん?!私、この人にヤられ・・・」
「言っとくけど!!アタシの初めては中学ん時だよ。アンタは遅すぎ。」
お母様、カミングアウト!!このやり取りを聞いていた脱衣所にいた殿方達は顔を赤らめながら股間を抑える。名物女将であるくらいだから、の母親はかなりの美女である。銭湯の一人娘だった母親であるから、古くからのお客さんにも人気は高い。人妻じゃなきゃ手を出したい、そんな男は数え切れぬほどいるはずだ。
「ほら、お母さんもいいって言っているんだからいいじゃないか。俺の女になれば、俺が作る新しい世界の女神だぞ♪」
「あら、素敵じゃないかい!!是非女神にしてやってくださいな。」
「もちろん☆」
「勝手に話を進めるなぁぁぁぁ!!」
真っ赤になって叫ぶではあったが、この二人に話は通じないらしい。ていうか、お母様、この胡散臭い話をしている蝶々仮面の男を、なんでそんなに買っていらっしゃるのですか!!
「照れてるんだね、可愛いな。さ、行こうか♪、最高の夜にしてあげるよ。」
「明日、学校休んでもいいからね。」
「よくない・・・っていうか、離してーーー!!」
の叫び声は累々と響き・・・夜の街へと消えていった。
もちろん、は朝帰り。学校も休んだ。
家に一人でいるかと思いきや・・・ちゃっかり隣には蝶々仮面の彼が。
「昨日、どうだった?」
「・・・よかった。」
「俺の女になるだろ?」
「・・・わかったわよ。」
「俺は、蝶幸せ者だね。彼らの尾行をしててよかったよ。運命の人に出逢えたからね。」
にっこり微笑む彼は、蝶々仮面を外す。彼女の前だけで・・・
の前だけでは、パピヨンではなく、蝶野攻爵でいたいと・・・昨日の夜に告げられた。
ホテルに連れ込まれ、彼は仮面を外した。なんとなく思っていた。同級生の誰かに似ていると。まさか本人だなんて思いもしなかったけど。
「・・・昔から・・・君のことが好きだった。君は、僕のことは知らないと思うけど・・・銭湯で会えたとき、すごく嬉しかった。この世界に、未練があったことを気付かされたよ。」
そう言ってなぜか寂しそうに笑う彼が・・・とても愛おしくなって。本能に身を任せた・・・。
それが招いた状況が、今の状態。腰が痛くて動けたもんじゃない。
の部屋で寛いでいた二人の耳に、足音が聞こえた。の前だけ攻爵に戻っていた彼が、再びパピヨンとなる。
「入るわよ。」
二人分のジュースを持ってきた母親が、ドアを開けた。二人を見下ろして、満足げに微笑む。
「どうやら、うまくいったみたいね。不器用な娘だけど、よろしくお願いね?蝶野くん。」
「!!気付いてたの?」
「なんだい、アンタ、気付いてなかったの?アタシ、アンタがあんなに嫌がってるの、照れてるからだと思っていたわ。アンタ、蝶野くんに片思いしてたでしょ?その彼がアンタにアタックしてるんだから、これは女として応援しないわけに行かないじゃない!」
「・・・」
平然と言う母親。クスッと笑い声を上げて、蝶々仮面を外した攻爵は、苦笑いを浮かべ、こういった。
「お母さんには敵わないね。」
「そうね・・・」
蝶野攻爵は自分の居場所を得た。パピヨンとしての居場所ではなく、蝶野攻爵としての居場所を・・・。
かなり訳ワカメでございますね。
パピヨン、変態ですよ。突っ走ってます。
何気にお母さんがいいキャラだと思うんですが・・・。