一夜をともに過ごした或る朝。
その男は、床に落ちている恋人の下着をまじまじと見つめていた・・・。



−セクシャルバイオレット☆−



キッチンの方では、朝食の準備をしているであろう、かちゃかちゃというものの触れ合う音がする。とりあえず、男にはそんなことはどうでもいいことで、今の彼に重要なのは、目の前に落ちている下着。レースのあしらわれた、黒いブラ。

「あ、おはよう。起きた?」

「・・・おはよう。」

恋人、が朝食のトーストとスクランブルエッグ、サラダを持って部屋に入ってきた。しかし、持っているのは一人分。の分だけである。

「ねぇ、本当に食べないの?」

「昨日、食事(人間)をしたから、今はいらないよ。」

ホムンクルスになりたいという心を受け入れ、ホムンクルスとなり「蝶野攻爵」から「パピヨン」となった自分を受け入れてくれた。彼女は、パピヨンの本当の理解者。

「・・・ちょっと、さっきから何を見てるわけ?」

が、パピヨンの視線の先にあったブラをおずおずと隠す。

「別にいいじゃないか。昨日も見たし?」

「そういう問題じゃない。」

とちょっとふくれっ面をして、トーストを頬張る。その仕種が可愛くて、ベッドから抜け出すと後ろからのことを抱きしめる。トーストを頬張る手を止め、静かにパピヨンに抱きしめられている

「なぁ・・・」

「何?」

そういうと、がさっきわざわざ隠したブラを引っ張り出すと、

「これ、蝶戴?」

と、男にはあるまじきセリフを吐いた。口の中にトーストの残っていたは、そのセリフの衝撃で喉を詰まらせてしまい、盛大な咳をした。

「大丈夫か(汗)?」

パピヨンは慌てて、グラスに注がれた牛乳をに手渡した。当のは、涙目で渡された牛乳を一気に飲み干し、大きく肩で息をしていた。

「な、なんなのよ、急に!!ブラなんて持ってって、何するわけ?!」

「・・・つける?」

「何でやねん!」

思わず関西弁で突っ込んでしまった。その様子を見ていたパピヨンはくすくすとかすかな笑い声を立てていた。

「俺のセクシャルバイオレットなお洒落に一役かいそうだからさ。ね、蝶戴?」

グラビアアイドルさながらのおねだりポーズをかまされた日にゃ、さすがのも動揺してしまう。

(・・・なんで私よりも色っぽいのよ!!)

「絶対あげない!」

踵を返して、テーブルの方に向き直ると、朝食を再開する。パピヨンはその後ろで、なにやらごそごそやっているようだが・・・気にせず朝食をとろうとする。しかし、パピヨンが何をやっているか気になって気になって仕方がない。ちらりと横目でパピヨンのほうを見やると・・・こともあろうにブラを付けてみようとしているではないか!

「やめい!!」

思わずぱこーんと、パピヨンの頭を丸めた雑誌でひっぱたいてしまった。

「痛いなぁ。」

「やめろって言ってんじゃん!!何やってんのよ。」

「似合うかと思って。」

「あのねぇ・・・」

もう、何を言っても聞かない。この男がこういう性格なのは昔から知っているけど・・・「パピヨン」と名乗るようになってから、ますますひどくなってきているような気がする。大きな溜息をつくと、その様子を見て、またパピヨンは笑った。

「嘘だよ、からかおうと思っただけだよ。」

「だったら早くブラ返してよ!」

「はいはい。」

パピヨンの手からブラを奪い取ると、すぐに洗濯物のかごに放り込んだ。名残惜しそうな目でその様子を眺めているパピヨン。

「私、仕事あるから、もう行くからね?出て行くときはちゃんと鍵閉めて出てってね。」

は、食べ終わった食器を洗いながらパピヨンに声をかける。コーヒーを飲みながら、パピヨンは生返事を返した。急いで化粧をし、出掛けようとするの腕を、パピヨンが掴んだ。そのまま引き寄せられ、軽くキスを交わす。

「いってらっしゃい。」

「・・・行ってきます。」

はこうして、仕事へと出掛けていった。

「・・・さて、そろそろアジトに戻らないとヤバいかな・・・」

椅子から立ち上がると、パピヨンも家を出て行った。



夕方。帰宅してが見たもの。なんとなく想像はしていたが・・・

「・・・アイツ!!」

洗濯籠に入れたはずのブラが消えていたのはいうまでもない。




ぎゃー!!パピヨン変態(笑)!!
「パピヨン女顔だから、きっとブラとかつけたら可愛い・・・」
とか私の脳内妄想から始まった話です(爆)。
・・・もっていったブラは一体どこに行ったのか、
どうしたのか・・・。何でこういうネタしか思いつかないのか・・・(苦笑)