貴方は不器用だから。
だから、貴方はこんなことをするの?
そんなことしなくても、私は貴方のことをちゃんと見てる。
だから、お願いだから、私の言うことを聞いてちょうだい!!
−不器用な男の純恋歌−
「ーーーー赤馬ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今日も再殺部隊が滞在している部屋に、大きな声が響く。
その声の主は、大鋏の武装錬金を持つ錬金の戦士、。隊員黙認の火渡の恋人。再殺部隊で唯一火渡に意見できる者だ。
「んだよ、うっせーな。」
仁王立ちして睨み合うと火渡。の後ろにはぷすぷすとガスマスクの武装錬金をショートさせながらフラフラとしている毒島。少し離れたところにはその他の再殺部隊の面々。全員そろっているわけではないのだが。他の再殺部隊の面々はくすくす笑いながら二人を見ている。千歳は目を逸らしているが。
「アンタ、何度言えばわかるの?!シャワー浴びんのはいいけど、せめてバスタオル巻いて出て来い!!また毒島がショートしちゃったじゃないか!」
「んなの俺の知ったこっちゃねぇ。」
「赤馬ぁ!」
「うっせーな、ご無沙汰だからイライラしてんだろ。」
「するかボケェ!!」
は火渡に殴りかかるが、どうあがいても火渡にはかなわない。
まったく、この破天荒で理不尽な性格はどうにかならないもんか。仲のいい再殺部隊の隊員、円山には「ホント、愛されてるわねー」と言われるが、どの辺が愛されているのか教えてもらいたいくらいだ。
「隊長、は、アタシたちに隊長の裸を見せたくないんですよ、きっと♪」
遠巻きに眺めていた円山が口を出す。その言葉に反応してすごい勢いで円山のほうに体を向け睨み付ける。
確かに・・・円山の言っていることは間違ってはいない。他の人に易々と見てほしいものではない。
「円、適当なこと言うな!」
「そうならそうとちゃんとこの口で言ってみろや。」
ぐいっと強い力で後ろから抱きしめられ首を火渡のほうに向けさせられる。もちろん火渡の格好はそのまま。また再殺部隊の面々からくすくすと言う笑いが起こる。いつの間にか千歳と毒島は消えていた。
「いった、放せ、赤馬!!」
「おら、言ってみろよ。『貴方の裸を他の人に見せたくないの、見せるのは私だけにして!』ってな。」
「んな恥ずかしいこと言えるかぁ!!」
必死でもがいて、火渡の腕から逃れようと試みるが、男と女の力の違いは歴然としている。
一生懸命逃れようとしてふと気がつくと、部屋からは誰もいなくなっていた。
その状況に気がついたは、一気に真っ赤になる。
「放せ、赤馬・・・」
「んでだよ?誰もいねぇぜ?」
「そういう問題じゃ・・・」
「言えよ・・・『私以外に裸見せないで』ってよ。」
耳元で囁く声。息が耳をくすぐる度に、変な気分になってしまいそうだ。
涙が出てくる。どうして彼は、私の言うことを聞いてくれないんだろう。何度こうやって「私以外に裸見せないで」と言わされたことか。
何度も何度も頼んでいるのに、一向に彼は直そうとしてくれない。
私の言う事を聞くのが嫌なのだろうか。
「おい、?」
急にもがくことをやめて黙り込んでしまったに、不安を抱いて火渡が戒めている腕を緩めた。
の顔を覗き込むと、その目は潤んでいた。
「な、?!」
慌てて自分のほうを向かせ、こんな状況でさすがに全裸でいるのはアレだと思い、肩にかけていたバスタオルを腰に巻いた。
「おい、どうした、?!どっかいてぇのか?」
いつも自信に満ち溢れている火渡も、恋人の涙の前ではただおろおろするばかり。どうしていいかわからない。
「・・・どうして?」
「ん?」
目の前の恋人がやっとのことで口を開いた。その一言一句聞き逃さないようにと聞き耳を立てる。
「どうして・・・私の頼みを聞いてくれないの?何度・・・『私以外に裸見せないで』って言わせたと思ってるの?こんなに何度もお願いしてるのに、どうしてやめてくれないの?!私のこと・・・好きじゃないの・・・?」
「そんなことはねぇ!ぜってぇに。」
「じゃあ、何で・・・?」
ますますの表情は涙に濡れる。
「わりぃ・・・昔からなんだよ、好きな奴をいじめちまうの。癖らしい・・・。でもやめる、お前のこと、泣かせたくねぇ・・・。お前が泣くと、俺はどうしていいかわからなくなっちまう。な、だから、泣き止んでくれ・・・」
「ん・・・赤馬・・・大好き。」
「あぁ、俺もだ。」
そういって火渡は自分より頭二つ分は小さいのことを抱きしめた。
・・・胸の中で、がしてやったり顔で微笑んでいることを火渡は気がついていない。
こんな二人だから、きっと長続きするのだろう・・・
・・・談
「赤馬は、たまに泣いてお灸すえなきゃ駄目なのよ。
私が泣けば、あの人、絶対に言うこと聞くから。
ま、しばらくするとまた元に戻るんだけどね・・・。」
微妙に腹黒なヒロインのお話。
火渡さんは絶対に好きな子ほどいじめたいタイプでしょう!
いやーでも、私やっぱり俺様キャラって書くの苦手かもしれない・・・。
ほら、パプワのハムたんとか。