♪」

「何だ?」

「いいお酒が手に入ったのよ☆」

「だから?」

「・・・一緒に呑みましょ♪」

「・・・よかろう。」



−宵闇の宴−



八雲の怪我もすっかりよくなり、と八雲はやっと恋人同士らしく振舞えるようになってきた。八雲はもともと

「恋人とは常に一緒にいたい」

という考えを持っており、はその考えに反対ではないものの・・・恥ずかしくてそれを素直に受け入れることが出来ないようだった。しかし、最近では八雲の猛烈な主張が功をそうしたのか、も徐々に八雲の行動を素直に受け入れることが出来るようになったいた。

八雲は嬉しそうにの手を取り、そのまま引っ張って館を出、滝をも出て行く。

「ち、ちょっと待て!どこに行くつもりだ?!人間に見られたら・・・」

「あらぁ、別に構わないじゃない。その人間、肴にしちゃいましょ♪」

「たわけー!!貴様と違って私は人間など食わん!」

「もう、冗談じゃない。ホント、って冗談が通じないわよねぇ。」

煩い・・・と不貞腐れたような顔をしながら、手を引かれているに、八雲の中での愛しさが募る。

「全く・・・反則よね・・・」

「何が?」

「何でもないわ。」

そんな会話を交わしながらも、八雲は森の中をずんずんと進んでいく。・・・と、急に前が開けたかと思うと・・・そこには眼下に広がる広大な真っ黒な森と、一本の糸のように続く川、そして彼方に煌く人間たちが住んでいるであろう街の明かりが混同する風景が広がっていた。

「・・・」

「どう?綺麗でしょ?」

「あぁ・・・」

「今日は月が出ていないから、綺麗に見えるのよ。これを・・・お前にも見せたかった。ここは俺しか知らぬ場所。お前と二人で来ることが出来て・・・俺は嬉しい。」

八雲の屈強な腕が、背後からの華奢な身体を包み込む。その温もりと目の前に広がる美しい風景に心を奪われて・・・はまるで夢の中にいるかのような感覚に陥る。

「八雲・・・ありがとう。」

「ふふ、どういたしまして。」

八雲の腕に手を添えて、は心からの礼を述べた。普段なら素直になれず、礼など言えないであろうが・・・何も考えずに口にした言葉に、八雲は心からの歓喜を覚えた。

「さ、呑みましょうか。」

「そうだな。」

八雲は懐から美しい杯を二つ取り出し、手にしていた大きな徳利からその中になみなみと酒を注いだ。は穏やかな顔で、その注がれた酒を呑み干す。

「あら、イケる口じゃない?ベロベロになるまで酔わせてあげるわ♪」

「ふ・・・貴様にそれが出来るとは思わぬがな。」

「あら、どういう意味よ・・・」

「こういう意味だ。」

は八雲から徳利を取り上げると、注ぎ口に口を寄せ、中にある液体を一気に流し込む。相当な量が入っていた徳利を全てからにするのに、さほど時間はかからなかった。八雲はのその行動に驚き、口を開けたままの様子を眺める。八雲がはっと我に返ったときには、は着物の袖で口の周りを拭っていた。

「ちょ、ちょっと!いくらなんでもそれは一気に飲みすぎじゃない?!結構強いのよ、そのお酒・・・」

「そうか?美味しかったがな。」

八雲の心配をよそに、はケロッとしている。

「・・・アンタ、もしかしてザル?」

「あぁ。呑んでも酔わん。一度も酔ったことなどないわ。」

自慢げに言う。そんな行動がなんとなく酔っているのかと思わせるところはあるが・・・とにかくケロッとしているので、八雲はがっかりしてしまった。その様子を見ていたは・・・

「どうした?」

と問いかけた。

「・・・あんたを酔わせてここでヤろうと思ったのに・・・」

としょげ返っている。

「・・・この色情狂!!」

の叫び声は累々と響き・・・隣の山のそのまた向こうまで響き渡ったとか。



久しぶりの八雲夢☆
八雲夢は(今のところ)皆同一主人公なんですが、
その主人公の意外な一面を垣間見せたくて書いてみました。
・・・八雲より酒の強い女、って言う話を書きたくて。
前半は真面目に夢小説なんですけどね・・・(苦笑)。