波紋一つない水鏡の如くとまった時間・・・
響くのは微かに聞こえる水が滝壺へと吸い込まれていく音と、
少女の泣き声。
その泣き声は、止むことを知らぬかのように・・・
−水鏡−
八雲の胸元より響く、くぐもった泣き声の主は。
神の遣いの白蛇であり、妖狩を生業としている者。
しかし・・・八雲に命を救われてから、心に変化が訪れていた。
今までに感じたことのない胸の痛み・・・。
ただただ、目に前に八雲の姿があることを嬉しく思った。
自分の傷を持ち去った八雲・・・。
自らの命を賭しての命を救った者。
その者が、何事もなかったようにを抱きしめている。
ただ、それが嬉しくて・・・
「・・・アタシの部屋、すぐ近くだからそっちに行きましょうか・・・」
八雲に手を引かれ、八雲の部屋へと歩を進める二人。
「どうぞ。探していたんでしょ?」
襖を開き、部屋の中へとを招き入れる八雲。
綺麗に片付けられていて、の部屋に焚き染められていた
香と同じ香の匂いがする。
ふと部屋の片隅を見ると・・・血を拭ったかのような白地に血痕のついた布。
それを見るなり、一度は治まりかけたの涙が、また溢れ出す。
「すまぬ・・・すまぬ・・・」
ひたすら謝り続け、涙を流す。
それを見た八雲は、溜息をつき、また優しくを抱きしめる。
「謝らないで。アタシが好きでやったことよ。貴方が心を痛めることはない。」
「だが・・・」
「もう、泣かないでったら。せっかくの綺麗な顔が台無しじゃない。」
腕を緩め、の涙を親指で拭う。
「しかし・・・」
「はい、そこまで!言っておくけど、もうほとんど傷も閉じて、
大丈夫なのよ。」
「だが・・・傷が残る・・・」
その言葉に、八雲は優しい笑みを浮かべ、
身をかがめて軽く自分の唇をの唇へと重ねた。
「惚れた女の命を救うためについた傷・・・
俺は誇りに思う。だから気にすることはない・・・」
「八雲・・・」
先ほどまでとは違う意味での涙が、の瞳から溢れ出す。
「よかった・・・死んでしまったのではないかと・・・」
「俺はそれほど柔な漢ではない。お前を残しては死なぬ・・・
無理にとは言わない。お前さえ構わなければ・・・
このままここに留まってくれないか・・・」
男らしい真剣な眼差し。
だが、少し切なげな・・・吸い込まれるような紅い瞳。
「お前のそばにいたい・・・共に生きたい・・・」
「や・・・八雲・・・」
それ以上、は何も言えなかった。
しかし、は八雲の胸に擦り寄った。
その様子を見た八雲は、を抱きしめる。
もはや二人には、言葉など必要なかった。
「ーv」
「何だ?」
「愛してるわよvV」
「ふん///」
毎日のように繰り返される二人の会話。
必要以上に愛を口にする八雲。
それを聞いて、顔を赤らめる。
波紋一つなかった二人の時間という水鏡は揺らぎ始め・・・
二人で過ごす時間を紡ぎだしていくことだろう。
はい、一応完結です。
中途半端な感じですね・・・
次も、八雲夢を書くときはこのヒロインを使うかもです。
個人的に、このヒロインと八雲の
掛け合いを書いているのが楽しいので☆