「黒岩!!」
「あぁ?」
騒々しく部屋に入ってきたのは、秀樹だった。
「何、どうしたの、秀樹さん。」
「お前にこんなことを頼むのは、本当に不本意なんだが、・・・俺の従兄妹を駅まで迎えに行ってくれないか?俺は会議をどうしても抜け出せないんだ・・・。」
−今時の若い子−
そんな頼まれ事をした黒岩。秀樹の話によると、次の4月に東京に出てくることになった、現役女子高生の従兄妹。名前は。今日は、4月から入居するアパートかマンションを探すために上京してくる・・・らしい。
「頼む、一人で東京を歩かせるぐらいなら、例えお前でも一緒にいてくれた方が気が楽なんだ。お前以外に頼まれてくれるような暇な奴いないんだよ!」
「暇で悪かったな!・・・うーん・・・昼飯一週間分で手を打ってやってもいいぜ。」
「昼飯でも何でもおごってやるから!頼む!!今日は、迎えに行って俺が仕事終わるまで相手しててくれるだけでいいから!!」
どうやら、この秀樹と言う男はそれほどまでに従兄妹のが心配らしい。しかし、昼飯にありつけるなら、駅に迎えに行くくらいならいいかと考えた黒岩は、その頼みを承諾することにした。
秀樹は、なにやらに電話をして、黒岩が迎えに行くことを伝えているようだ。電話を切った後、近くにあった白い紙切れになにやら書きなぐって、黒岩に差し出した。
「の電話番号とメールアドレスだ。アイツが教えろって言うから教えてやる。変な気、起こすんじゃないぞ!」
そう言い残すと、秀樹は怒涛の如く部屋から出ていった。その口調に苛立ちを覚えた。しかし、そんなことに怒っていてもに会える訳ではない。
黒岩は携帯を取り出すと、紙切れに書いてあるメールアドレスへとメールを送ることにした。
『初めまして。今から君を迎えに行く、黒岩だよ。何時に着くの?』
羽根の生えた封筒が遠くへと遠ざかっていくアニメーションを見ながら、そのメッセージが送信されていることを確認する黒岩。送信完了画面が表示された携帯をボーっと眺めていた黒岩の携帯に、すぐに返事が返ってきた。さっきとは反対の、羽根の生えた封筒が近付いてくるアニメーションが表示されたかと思うと、シンプルな着信音が部屋に響きわった。
『初めまして。と申します。わざわざ申し訳ないです。一人で東京に行くの初めてで、不安で・・・。あと2時間くらいで着くと思います。本当にすいません。よろしくお願いいたします。』
黒岩の第一印象は、随分と礼儀正しい子なんだな、というところだった。一体どんな子なんだろう。少しわくわくしてきた黒岩は、送られてきたメールに返信した。
『顔、わからないから、よかったら写メ送ってくんない?』
封筒がの元へとメールを運んでいく。
そのすぐあとに、また封筒が黒岩の元へとメールを運んできた。
今度のメールは添付ファイル付。
『こんな感じの顔です・・・。ごめんなさい、あんまりいい写真がなくて・・・』
そんなコメントの付け加えられたメールの添付ファイルを開いた黒岩の眼に映ったのは・・・黒髪の、目のパッチリした非常に可愛らしい少女の写真だった。まさに美少女。
『すごい、可愛いじゃん!』
『そんなことないですよ(^_^;)初めて言われましたよ。』
『冗談!めちゃくちゃ可愛いって!』
『恥ずかしいですよ・・・ありがとうございます。』
メールをしながら駅へと歩を進める。メールのやり取りをしていると、時間の流れというものは非常に早いもので。駅へ着いて時計を見上げると、丁度のつく時間だった。
『○○口にいるから、そっちから出てきて。』
『わかりました!』
そんなメールを交わしてから5分ほどたったとき。改札から黒髪の美少女が出てきた。写メなんかじゃ比べ物にならないほど可愛らしい女の子は、きょろきょろと辺りを見回している。そういえば、さっきの写真は見たけれど、自分の写真を送っていなかったことに気付いた。あまり女の子と喋る機会の多くない黒岩は、意を決したかのようにその女の子に話しかけた。
「ちゃん?」
「はい・・・黒岩・・・さんですか?」
「うん♪」
「あ、初めまして。よろしくお願いします。」
にっこりと微笑んだその少女の笑顔に、黒岩は見事にノックアウトされてしまったようで。顔を真っ赤にしてのことを見下ろしている。
「あの・・・黒岩さん?」
「あ、ごめん、その・・・腹減ってねぇ?俺、腹ペコでさ!」
ニッと笑って、腹をさする黒岩。腹が減っているのは嘘ではない。
「あ、私もお腹空いてるんです!もし良かったら、美味しいお店とか、紹介してくれませんか?」
「うん、じゃ、行こっか。」
そのあと、二人はけっこう有名な喫茶店に入って軽食を摂った。その喫茶店で話していて、もゲームが好きだという話になり、二人でゲームセンターへ。黒岩の格ゲーの腕に感心してみたり、はたまたの音ゲーの腕に驚いてみたり、プリクラを撮ってみたり、UFOキャッチャーで人形をとってもらったりと・・・二人は、ごく普通のカップルの如く時間を過ごした。
そろそろ夕方の6時。秀樹の仕事も終わる時間。
「ありがとうございました。すごく楽しかったです。」
「うん。俺も。4月になったら、こっち住むんだろ?また一緒に遊ぼう。」
「はい。」
迎えに来た秀樹に連れられて、は人混みに消えていった。黒岩の心の中には、何か穴が開いてしまったような寂しさだけが残った。
家に戻り、パソコンをいじっていると、充電器にさしていた携帯電話からメールの着信を知らせる音楽が流れた。送り主を見ると、そこには「」という文字が。
『今日はありがとうございました。とても楽しかったです。黒岩さんみたいな人が彼氏だったらいいなぁ・・・って思いました。ただ、お礼が言いたくてメールしちゃいました。お休みなさい。今日は、いい夢見れそうです。』
その文字の羅列を見て、黒岩の顔は自然と綻ぶ。カチカチと、そのメールに対する返事を打つ黒岩。
『俺も、すごく楽しかった。俺も、ちゃんみたいな彼女が欲しいなって思った。4月に出てくるときに彼氏がいなかったら、俺と付き合って。』
送信。
カチカチと秒針が時間を刻む音。そんな中、羽根の生えた封筒は黒岩へと向かってくる。さて、その返事は・・・?
・・・それは、黒岩と、だけの秘密。
大好きなんです!黒岩くん!
八神さんも捨てがたいし、大島くんも捨てがたいけど・・・
やっぱりドリームネットPAPAなら彼が一番でしょう!!
前々から言っていますが、
彼みたいに、暗い過去を背負っているキャラが
大好きなんです!!